2010/07/26

勝手に小説化 FF5 vol.9

Filed under: 勝手に小説化FF5,連載 — ksk @ 10:42 PM

 

 四人は信じられない光景に目を疑った。誰も口を開くことができずに、数秒後レナが力を失ったようにその場に座り込んでしまった。クリスタルルームの中心、台座にその主の姿はなく、代わりに部屋中に、砕け、四散したクリスタルの欠片が散らばり、弱々しく光っていた。

 自然の力の源であるクリスタル。そのうち風を司るクリスタルが失われたということは、もはや世界に風が吹かないことを意味していた。船が海原を駆けることも、渡り鳥が海を越えることも、宵の街に夕食の香りが漂うことも、もうない。

「世界が……お父様……」

 レナが力なくつぶやいた。バッツはその肩に手を置いて、じっと状況を見定めようとした。先ほどの怪鳥が砕いたのだろうか。風の源は、伝説のクリスタルはこんなにも脆い存在だったのだろうか?そもそも、あの怪鳥はどこから現れたのか?タイクーンの王はどこにいったのか?先ほど自分を助けた謎の声は?バッツはぶんぶんと頭を振った。判らないことが多すぎる。一度に解決しようとしてはいけないと、バッツは思った。

 ファリスは散らばったクリスタルの欠片を眺めながら、台座の周りを歩き始めた。欠片の断面がきらきら輝き、ファリスの姿を映した。ファリスはそのうちのひとつを手に取ろうとし、欠片に触れた。

 瞬間、ファリスの脳裏にイメージが流れ込んできた。空、そしてどこかの国、赤い光を帯びたクリスタル――ファリスは思わず声を挙げ、手を引いた。

「どうした!?」

 ガラフがファリスに歩み寄ろうとした瞬間、部屋中のクリスタルの欠片が輝きだした。

「これは……」

 レナが困惑した表情でつぶやいたとき、今度は四人の脳裏に同時にイメージが流れ込んできた。

 

四人は空を飛んでいた。眼下の景色は風の神殿から海、森、砂漠と移り変わり、やがて城と街が見えた。四人はその城に飛び込むように落ち、そこで炎のように力強い、真っ赤に光るクリスタルを見た。赤いクリスタルから四人は勇気を受け取った。そのまま、四人はまたも宙を舞い、水に囲まれた天高くそびえたつ塔へと飛んだ。豊かな水を湛えた青く光るクリスタルから、いたわりの心を託された。次に飛んだのは遠い遠い昔に忘れ去られたらしい廃墟だった。いくつもの土と鉄との層を潜り抜け、見たことのない遺跡のような景色をめぐり、辿りついた先には黄金色に輝くクリスタルがあった。クリスタルは四人に希望を託した。最後に四人は風の神殿に戻ってきた。散ったクリスタルたちが一斉に、より強く輝き、バッツ達に探求せよと語りかけてきた。やがて、バッツ達の身体はそのまま地面に降り、四人は我に返った。まるで夢を見ていたような気分だったが、しかし四人は確かめずともお互いが同じ経験をしたことを実感していた。

「今のは……なんだったんだ?クリスタルが……」

バッツが呟いた。今の体験を、うまく言葉で説明することができなかった。

「クリスタルの……心?」

レナが呟いた。それはなんとも曖昧な表現ではあったが、しかしその言葉が一番しっくりくるように感じられた。四人は確かにクリスタルの持っていた思念のようなものに触れたし、それは四人の内に強い何かを残していた。

「なにやら、あったかいのう……」

ガラフが穏やかな顔で言った、その時だった。レナが突然、クリスタルの台座の方に向き直った。つられて、他の3人もそちらを見る。ファリスがあっと高い声を挙げた。先ほどまで誰も居なかった台座の上には、青いローブを着た男性が立っていた……立っていたというのは少し正確ではなく、男性の両の足は、ほんの少し地面から離れていた。バッツは思わず剣の柄に手を添えたが、しかし男性からは邪気が感じられず、バッツはそのまま身体の力を緩めた。

「お父様……!」

「父さん……レナの……?」

 レナの反応に、ファリスがレナと男性を交互に見比べた。レナは戸惑っているようだった。それもそのはずで、人間であるレナの父、タイクーン王であるなら、多少の魔法の心得があるとはいえ地に足をつけずに立つなどということはできるはずがないのだ。しかしそれでも、レナは探し求めていた父の姿を目にして、涙があふれてきていた。タイクーン王はレナに一度、優しい笑みを向けると、それからすぐに顔を引き締め4人に向き直った。

「よく聞くのだ。お前たちはクリスタルに選ばれし4人の戦士。……4つの心が宿るもの。勇気、慈愛、希望、探求……」

「どういうことですか、お父様!」

 レナがタイクーン王の言葉を遮って言ったが、タイクーン王は構わずに続けた。その顔には、若干の焦りが見られた。

「風のクリスタルは砕け散ってしまった。そして、他の3つのクリスタルも砕け散ろうとしている……お前たちは、クリスタルを護らねばならない。邪悪な者がよみがえろうとしている……全てを闇に変えるものが……」

 そこまで言った時、王の周りに突如、黒い霧のようなものが立ち込めた。同時に、先ほど怪鳥が現れた時のような嫌な感覚が4人を襲った。バッツは、今度はためらいなく剣を抜いた。

 黒い霧は、王を閉じ込めるように丸く包み込んだ。王は焦燥の表情を見せ、抵抗したが、球体は王を呑みこんだままふわりと浮きあがった。

「お父様!!」

レナが叫ぶ。

「行け!4人の戦士たちよ!クリスタルを護るのだ!」

 王がそこまで叫んだ時、球体は驚くべき速さで飛びだした。バッツ達が動き出す間もなく、球体はまるでそこに壁などなかったかのように、神殿の外壁を通り抜け、王を連れ去った。同時に、その場を支配していた瘴気が消えた。レナが再度叫んだが、その声は王の消えた壁に跳ね返り、ただ残響を残すだけだった。

 4人はしばらくの間、ただ立っていることしかできなかった。クリスタルの喪失、タイクーン王の残した言葉、一つ一つの事を反芻する時間が必要だった。

 ガラフは王の言葉を受けて、頭に鈍い痛みを感じていた。ガラフには、タイクーン王が言っていることを自分は既に知っていたような、奇妙な実感があった。もし自分が記憶を失う前にそのことを知っていたのだとしたら、自分が風の神殿を、そこにあったはずのクリスタルを求めていた事に説明がつく。しかし、なぜ自分がそのことを知っていたのかという事を思いだそうとすると、再び頭が刺すように痛みだした。結局、自分の正体が何であるかは判らないままだった。

 ガラフがこの場で自分の正体を思いだす事をあきらめた時、周りに散らばったクリスタルの欠片が再び、光りだした。4人がその状況に戸惑っていると、クリスタルの欠片はふわりと空中に浮かびあがり、お互いがお互いの光を受けて七色に輝きだした。

「クリスタルの欠片が……」

 ファリスが口を開きかけた時、クリスタルの欠片たちはいっそう強く輝き、次の瞬間には閃光となって、4人の身体に飛び込んだ。4人の心は再び風の神殿を離れ、イメージの世界へと跳んだ。4人の心は今度は空ではなく、時間と、人の心を駆けた。クリスタルに宿る古の勇者たちの心。歴戦の戦士の、高名な魔術師の、研究に己を費やした博士の……そこには幾千もの戦いがあり、勝利があり、出会いがあり、喜びがあった。敗北、別れ、悲しみを見た。恋をし、愛しあい、子を成し、あるいは別れ……最後に勇者たちは永き眠りについた。いずれも、己を高め、他の為に己が人生を投じた誇り高き戦士たちだった。

 バッツはイメージの世界で、先ほど怪鳥の戦いの際にバッツの身体に入り込んだ戦士と出会った。戦士はバッツに頬笑み駆けると、世界を、孫たちをよろしく、と言った。バッツが頷くと、戦士は光となってバッツの中に飛び込んできた。

 気がつくと、4人はまたクリスタルルームに還っていた。さきほどまで部屋に散らばっていたはずのクリスタルの欠片が、一つも残っていなかった。

「俺たちが……護る?クリスタルを……」

 バッツが反芻するように呟いた。誰も返事をできなかった。

「さっきの……他の3つのクリスタルの場所……?私、見たことがあるわ、あの青いクリスタル、あれはウォルスの……確か、水のクリスタル、お父様に連れて行ってもらった……」

 レナが言った。レナも混乱しているようで、言葉がうまく続かない。

「むう、しかし」

 声を発したガラフは、辛そうに頭を抱えていた。

「わしは、そうするために、ここに来たような気がする……わからんのじゃが、そうしなければいけない……」

 3人はガラフを見た。

「さっきレナの父君が言っておられた言葉……わしはここに来る前、クリスタルが危ないということを知っていたような気がしてならんのじゃ。それも、風のクリスタルだけではない……他の3つ、全てのクリスタルが……」

 そこまで言って、ガラフは表情をゆがめた。頭が痛むのか、ガラフはそのまま黙ってしまった。

「でも、なんでだ?どうして俺たちが?俺たちはさっき見たみたいに、ご立派な人間じゃあない。勇者だって?そんなのは、もっと歴戦の戦士とか、そういうお方にふさわしい称号じゃないのかい?」

 ファリスは混乱したようにそうまくしたてた。しばし、沈黙が流れた。

「俺は……行ってみようと思う。ウォルスへ……」

 バッツが口を開いた。

「確かに、俺は勇者なんかじゃない……でも今、クリスタルは俺たちに伝えて散ったんだ。俺たちが動かなきゃ、多分、誰も動けない。クリスタルが壊れるなんて、信じられるのは目の前で割れたクリスタルを見た俺達だけだ。それに……助けてもらった恩がある」

「恩?」

 レナが聞いたが、バッツはそれに返事はしなかった。怪鳥との戦いのときに力を貸してくれた勇者とかわした言葉と気持ちを、バッツは上手く伝えられそうになかったのだ。結果としてバッツは、彼の頼みを聞こうと思った、そのことだけでいいと思った。

「私も……行きます。」

少しして、レナが続けた。ガラフも強く頷いている。

「満場一致か、やれやれ。じゃあ行くよ、俺も。」

 ファリスが頭を掻きながら言った。

「ウォルスに行くとなると、水門を越えて南だな……肝心の門はどうする?王女様」

「門の管理人を知っています。トゥールに行きましょう」

レナがファリスに答えた。オーケー、とファリスは答え、4人は神殿を出てトゥールに向かった。

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ヘルミーナとクルス

Filed under: ゲーム — ksk @ 6:22 PM

小さい頃に、朝起きて冷たくなってた携帯カイロを見て
なんだか無性に悲しくなって泣いた事がありました。

と、いうことをちらっと思いだしたゲームです。
ガストの「アトリエシリーズ」ザールブルグ3作の
「リリーのアトリエ」キャラが登場します。
幼少期のヘルミーナが作成したホムンクルス「クルス」との
やりとりを描いたもので、ボリュームは小さめ。
高評価だったので気になっていたのですが、
最近ブックオフで500円で買えました。

ネタバレになりそうなのでプレイする意思がある人はお気をつけて。
作品の表現として面白いのは、
「クルス」に感情はあったのか?
という最後まで残る疑問です。
プレーヤーがクルスを操作するにも関わらず、
クルスの表現は最後まで淡泊で、
基本的には単語でしか喋れません。

その中でクルスは様々な言葉のパターンを駆使しますが、
そこで出てくる感情表現は基本的に会話の相手であるヘルミーナのもの。
最期のシーンも非常にあっさりしたもので、クルスの寿命が尽きても
視点はもともとクルスにあったのでプレーヤーには喪失がない。
この部分が残酷さを持ちながら、しかし繊細な所で、
どう見るかは結局がプレーヤーに委ねられます。
「お涙ちょうだい」でハッピーエンドにするでもなし。

ヘルミーナとコミュニケーションするゲームと取られそうですが、
しかしなかなか見せ方は面白いです。
ゲーム性は薄いのでビジュアルノベルに近いし、
しかもリリーのアトリエをしっかりプレイしているという前提が必要ですが、
現在取引されている値段としては相応以上に面白いと思います。

つぶやくつぶやく

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