PSP版 Chaos Head Noah
PSPのChaos Head Noahをプレイ、全エンディングクリアしました。
外で持ち歩いて少しずつプレイするゲームがないな、
と思って購入したんですが、自宅でも積極的に
プレイするほどに引きこまれてしまいました。
以下、ネタバレも含みつつ感想を書いていきます。
・知らない人の為のストーリー
主人公は渋谷で卒業最低限の登校でネトゲ廃人な生活をする
妄想癖激しい一人暮らしの「オタク」な学生。
しかし、世間をにぎわせていた猟奇殺人事件
「ニュージェネレーションの狂気」の第三の事件を目撃してしまう。
その後犯人の口封じを恐れる主人公に起こる奇妙な事件の数々。
…といったような背景です。
元々がPCでの発売だっただけあって、猟奇殺人の描写とかは
PSPというプラットフォームでありながら血とか一杯出てます。
テキストも含め、全体ではホラーというよりサイコな方に入ると思います。
■システム
色々書かれてはいますが、
つまるところ分岐の選択の連続であるところは
一般的なビジュアルノベルゲームと変わらないと思います。
が、良いゲームは総じてシステムとストーリーを全体でひっくるめて
一つのデザインとして丸めてくる事が多く、
これもその類に入ります。
で、カオスヘッドでは「妄想トリガー」という選択方法をとります。
ある事態に対して主人公が「ポジティブな妄想」「現実」「ネガティブな妄想」
いずれかを選択することで、フラグが変化する…のですが、
つまりは「妄想」であることが重要であり、
「妄想」をプレーヤーが操作することがデザインとしての根幹です。
■ゲームデザインと演出について
ここからはいよいよネタバレ話になっていきます。
このゲームが面白いのは、一つ一つの物事が
「who done it」「why done it」という次元に
達しないレベルで前半の話が進む所にあると思います。
主人公が「妄想」を繰り返すわけですが、
この妄想には「いちおう」始点と終点が演出として定められています。
が、しかしこの始点と終点が非常に曖昧です。
はっきり演出ルールが適用される場合と、
適用されずに妄想が終了してしまう場合がある。
序盤で主人公の精神的な疾患の可能性が宣告されるのですが、
この「主人公の精神があやふや」ということに対して
演出ルールが曖昧に運用されるというのがとても上手くマッチしてます。
主人公は「ニュージェネレーションの狂気」事件に対して恐怖するわけですが、
その事件、その関連事項がどこまで事実でどこまで妄想なのか、
というラインを上手にぼかしている。
興味の視点をこのライン上にしっかり誘導しています。
・ミスディレクション
更に上手なのは、多数の伏線を蒔きながら
主人公の妄想と精神疾患の可能性に目を向けさせることで、
「主人公」そのものの存在は逆にしっかり根付く事です。
前半は主人公以外のキャラの存在が非常にあやふやなのですが、
後半は一転して主人公の存在があやふやに感じていく。
その移行が非常に自然です。
■科学?
妄想科学AVGということですが、
確かに科学というかSFの要素は強かったし、
用語も多かったですが、自分にはむしろ哲学的なテーマが
色濃く出ているような気がしました。
もちろん哲学も立派な人文科学と考えればよいのですけれどね。
そういえば「盲点(盲斑)」って、子供の頃に簡単に接する
不思議テーマとしてはポピュラーだと思うんですが、
意外とそうでもないんでしょうか。
盲点で面白いのは、盲点は光を受容できないのにかかわらず
盲点の部分で隠れるたものの背景にはちゃんと色がついてる(※)ことで、
これが「脳が重要情報を再構築してる」という体験に繋がります。
お時間に余裕のある方は盲点の実験で試してみてください。
■キャラクター
初回のプレイでは、主人公以外のキャラクターへの
感情移入があまり強くなりませんでした。
それは主人公にとって他のキャラクターの
立ち位置が動き続けること、
そしてそれぞれのキャラクターと触れている時間が少なく、
主人公以外のキャラの内面を知るのが難しい、
ということがネックになっていると思います。
主人公の内面は嫌というほど聞かされますが、
それ以外の6人の重要な女性キャラの事については
初回は最後まで不明な部分が多い。
二回目以降はそれぞれのキャラのエピソードに進めますが、
これはIFでもあり、しかしキャラの背景でもあります。
キャラによっては非常に残酷なお話なので、
話をみているのも辛かったりしました。
各ルートを通っても、あまり前後が明らかにならなかった
キャラクターも居たので、そこが少し残念なポイント。
主人公のキャラが過剰に立っているだけに、
もう少し各ヒロインキャラ・サブキャラには
スポットが当たってもよかったのではと思います。
・主人公について
「ずっとヘタレ」と聞いたのですが、
確かにその通り。どのルートを通っても、
相手に対する承認欲求と、行動の原理が保身であることが
少なくとも「ヒーロー」ではない。
一番最後に能力を手に入れてようやく戦う力を得るものの、
そこまではずっと弱者でしかない。
しかし弱い心であるからこそ前半のストーリーが成立するので、
こうであるしかないのだと思います。
ヒロインとの関係の描写は非常に少ないので、
各ヒロインとのストーリーを成立させる順当な理屈も
「既に覚醒している強いヒロインに依存する」
という文脈でしか進められない。
思えば不幸な主人公の気がしますが、
こうでしかいられないのだと思います。
■作品としての弱点
・カタルシスがない
すぐ上で述べたように、主人公は最後まで精神的には弱いので、
たとえば「ダイの大冒険」のポップや、
「ロトの紋章」のポロンのように、弱者から覚醒して
強者に打ち勝つというカタルシスは殆どありません。
最後は思ったよりずっとあっさりで、
本当にラスボスとの力関係が転換したのかも怪しい。
エンディングはちょっとほっとするけど、
でも爽快感は最後まで与えられなかった気がします。
・グロかったりエロかったり
電車内や職場のお昼休みとかでもプレイしてたんですが
電車内で主人公のエロ妄想グラフィックが大写し とか
職場でPSPにアヘ顔が大写し とか、
ちょっとした事故が一杯発生して困りました。
僕も妄想トリガー引きそうです。
・専門用語
科学用語の他に、2ちゃんねる等で使用される
ネット上のスラングが多く、耐性が無い人は辛い。
と同時に、ネット上のスラングであると、
通用する時期が短いのではないか、という懸念があります。
3年後とかにこの作品に再度、もしくは誰かが初めて触れた時、
「古い作品だな」と思ってしまうのではないか。
ネットスラングの多用で主人公が非常に映えてますが、
ここは諸刃の剣だと思います。
・繰り返しが辛い
色んなサイトの感想で目にしましたが、2周以降、
分岐点から各ヒロインのシナリオに入るまでが
非常に長く、スキップを使っていても相当な時間がかかります。
放置で済むには済みますが、繰り返しが辛いです。
でも、それは自分がノベルゲーに慣れていないからかな。
■最後に総評として
非常に面白いんですが、ストーリーの残酷さ、表現のきつさで
積極的に他人に薦めにくいゲームだと思います。
「興味と耐性のある人はどうぞ」という、受動的な薦め方になってしまう。
でも、面白いです。
次回は各キャラクターについて。
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